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家族に贈る七題 [駄文]

5.記念日がいっぱい (今日は何の日?) カレンダーに薄く丸がついているの、二人は気づいているのかしら。
 忙しい二人はカレンダーよりも時計の方ばかり気にしているみたいで、私たちがつけた丸印には気づいていないみたい。
「それは都合がいいけれどね」
 フウカちゃんは隣で小さく頷くと、嬉しそうに尻尾を震わせた。
 もうすぐリフちゃんとクラック君が結婚して2年目になる。それを知っているのかわからないけれど、お店の方が忙しいみたいで、その話をしたり準備をしていないみたいだった。
 大事な記念日だもの、リフちゃんは顔に出さないけれど、本当はクラック君のことが大好きなのよ。きっと初めて見る人は夫婦どころかカップルにも見えないんでしょうけど……。
 フウカちゃんはお店に出ている二人を確認すると、せかせかと布とミシンを取り出して作業に取り掛かる。私とフウカちゃんでぬいぐるみを作ろうと頑張っているんだけど、なかなか上手く作れない。
 私はぬいぐるみ作ったことないし、フウカちゃんも好きだけどちんぷんかんぷんで一向に作業は進まなかった。もっと簡単な物を作った方がいいのかしら……。
「二人とも、ドうかしましたか」
 リビングに顔を覗かせたリフちゃんに、フウカちゃんは驚いてミシンを転倒しかけ、私が慌てて
「何でもないのよ」
 と微笑みかける。リフちゃんは察してくれたのかすぐにお店の準備に戻っていった。
 大変ね。くすりと笑うとフウカちゃんは腕を組んで作りかけのぬいぐるみをにらみつける。
「頑張ってみましょう、せっかくの記念日だもの」
 二人に喜んでほしい、ずっと一緒にいてほしい。フウカちゃんと頑張ろうね、って買い物して、教えてもらって、本を読んでここまできたんだもの。すぐに諦めるなんてもったいないわ。
 理解してくれたみたいで、フウカちゃんはやる気を取り戻すとミシンに手を掛けぬいぐるみ作りを再開させた。
 こうやって頑張った日々も、記念日を輝かせる一日になるわ。
 私がフウカちゃんの邪魔をしないように、本棚にある参考になりそうな本を探していると声にならない悲鳴が聞こえる。……やっぱり、まだまだ先は長いみたい。
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