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家族に贈る七題 [駄文]

4.感謝のカタチ
 とんとん、と扉をノックして部屋に入ると、床に散らばったビー玉やガラスの瓶を足で避けて歩く。
 机にお粥を載せたお盆を置いてからロフトの柱をまた、二、三度叩いた。
「大丈夫ッスか? 風邪移らないんですし下りてきてくださいッスよ」
 布団がもぞもぞと動く音がして暫くするとリフが顔を覗かせた。顔は赤く目も空ろ気味だ。普段から目をぱっちり開いているわけではないのであまり変化はないが。
「いいエ、そういうわけにハいきません……心配さセます」
 余計心配なんですけど。とは言わずに強情さにため息が出た。弱音を吐かないということはそこまでつらいわけではないのだろうが、そばにいた方がいいだろう。
 階段のないロフトを上がることはできない。ロフトに誰もあげさせないために階段を取っ払ったのだが、もしこれで風邪が悪化して一人で降りれなくなったらどうするのか。クラックはなんとか説得して、自らの部屋で寝るように催促した。
 モンスターのウイルスは独特で、リヴリーやミニリヴリーには移ることはない。それは既に経験済みでフウカが風邪をひいたときはリフがつきっきりで看病したものだ。
「もう、無茶しないでくださいッス。体が強いとはいえこういうことになるんスから」
 額に濡れたタオルを載せると、リフは口を尖らせて納得していないようだった。
 昨日、突然大雨が降り出かけていた織色を迎えに行ったのだが、急いだあまり傘をさしたにも関わらずずぶぬれになってしまったのだ。
 風も冷たく、織色に先に入浴させたため体が冷え風邪をひいてしまったのだ。
「そのこトに関しては反省していマす……後悔はシていませんが」
「してください」
 しょうがない人だ。呆れつつ何かあったら呼んでくださいと席を立とうとすると、リフがじっと見つめてきていることに気がついた。
 何かほしいものでもあるんスか? というとどもりながら
「すいマせん、手を焼かせテしまって」
 と謝られる。
「もう、そういうときは謝るんじゃないッスよ」
 クラックはふふっと笑う。
「えーと……ありがとうゴざいます」
「そう、それでいいッスよ。無理しないで早く治してくださいッス」
 立ち上がろうと膝立ちすると、火照って弱まったリフが何だか可愛く見えてしまい、つい頬にキスをしてしまった。
 これはまずいだろうな、と瞬時に判断し身構えるがリフは眉をハの字に曲げ、
「……覚えテおいてくださいヨ」
 と怒りながら布団をかぶってしまった。
 何事もなかったならそれでいいか。覚えておいてどうなるかは後々考えればいい。
 とにかく、怒鳴るぐらい元気になってくれればそれでいいか。など考えるぐらい、クラックは自分の立場を理解していたのであった。

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